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堺市上下水道局 様 
料金収納にかかる手間やコストをPAYSLE機能搭載の「すいりん」導入で削減していく

水道事業の大きな課題 収益力低下

私たちの生活にとって、「水の安定的な供給」はもっとも大切なライフラインと言えます。しかし、それを担う、地方公共団体の水道事業は収益力の低下に苦しんでいます。総務省自治財政局公営企業経営室「水道事業についての現状と課題」(平成30年1月)には『水道事業は、原則水道料金で運営(独立採算制)されているが、人口減少に伴い料金収入も減少し、水道事業の経営状況は厳しくなってくる』と記されています。

大きな原因は少子化による利用減です。しかし、今後人口が急激に増えることは望めません。また、水道利用が減ったとしても、安定的に水を供給する水道施設や設備を維持していくコストは必要です。とはいえ水道料金を急激に上げることも困難です。そうすると、水道事業者にとって2つの方策が現実的ではないかと思われます。

・水道料金の収納率を高めること
・水道料金収納やその他事務作業にかかる人的・物的コストを減らすこと

いち早くこれらの取り組みを開始したのが、大阪府堺市上下水道局様です。

堺市上下水道局様のスマホアプリ活用と「PAYSLE」採用

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堺市上下水道局様はスマートフォンアプリに注目し、 令和3年2月より給水契約がある人向けに、アプリ「すいりん」の提供を開始しました。同アプリで使用水量や水道料金・下水道使用料を簡単に確認できるほか、請求データがスマートフォンに送信され、キャッシュレス決済やバーコード表示によるコンビニ店頭払いができるようになりました。さらに、令和3年6月からは、クレジット決済の申し込みや、水道の利用休止や市内転居時の使用休止・開始の申し込みができるようになりました。

 スマートフォンでのコンビニ店頭払いを可能にしたのは、同アプリに組み入れていただいた「PAYSLE」です。PAYSLEは、コンビニ払込票をデジタル化し、ペーパーレスでコンビニ決済ができるシステムです。紙の納入通知書が不要になることで、紛失や汚損などの心配がなくなり、複雑な手続きなく、利用者が都合の良い時に、近くのコンビニで水道料金等を支払うことができます。

堺市上下水道局様は、水道事業のDX化に踏み出されたわけです。堺市上下水道局 サービス推進部長藪下様に、PAYSLE導入前の課題や導入後の状況、また堺市上下水道局様の今後のビジョンなどをお伺いしました。

​すいりんアプリ内画像

「PAYSLE」導入を堺市上下水道局様に聞く

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堺市上下水道局 サービス推進部長 藪下様

― 「紙の納入通知書」による支払いには、どのような課題があったのでしょうか?

「料金が確定してから、印刷および郵送するまで数日を要しますので、納入期限までの日数が2週間ほどになります。その間、いざ支払おうとする時に納入通知書を家に置き忘れていたり、紛失してしまったりすることがあったかと思います。納入期限が過ぎてしまうと再度、こちらから郵送する作業が発生しますし、到着まで日数がかかります。また、郵便費用の負担増などコスト面でも課題でした」

― 「PAYSLEを「すいりん」に導入決定されたことについては、どのようなポイントを評価していただいたのでしょうか?

「契約していたコンビニ収納代行業者様からPAYSLEというサービスについて教えていただきました。PAYSLEはすでに様々な事業者様で利用されているサービスであり、スムーズにすいりんアプリ内へ導入可能とお聞きし、アプリ導入スケジュールに間に合うということで進めました」

― 導入に、何かハードルはありましたでしょうか?

「以前は法的に“書面での通知”が必要でしたが、2019年12月、デジタル手続法の施行によりデジタルでの通知が可能となったことが後押しになりました」

― (PAYSLE機能を持った)すいりんを導入したことで、利用者の方からは何か反応がありましたでしょうか?

「利用者の方からは、2年間の水量や料金履歴が見られること、紙がなくてもスマートフォンで支払いができるところが便利だというお声をいただきました。前例がない中で、支払いまで行えるアプリの導入は慎重になる部分もあったのは確かです。しかし関連企業の協力もいただき、他の自治体に先駆けて実施することができてよかったと思っています」

― 他の自治体から、何か反応がありましたでしょうか?

「導入後は多数の自治体より問い合わせをいただく等、反響がありました」

堺市上下水道局様の今後の取り組み

― 水道事業には人口減による収益の減少などの課題があると聞きます。それらへの取り組みについて、お考えをお聞かせください。

本市においても、全国の水道事業体と同様に人口減少や節水意識の向上により水需要が減少する中、引き続き安全安心な水道水の提供を持続するためには、経営基盤の強化や業務効率の向上は不可欠です。そのために、ICTの活用を促進することで利用者のサービスを向上と業務の省力化に取り組んでいくことが重要と考えています。

― 業務の省力化とはどのようなことになりますか?

例えば水道料金等の確定後、納入通知書を作成し、封筒に入れて郵送する業務。本市上下水道局では初回の納入通知書だけで年間約50万件発送します。そういうことをみなさんが持っているスマートフォンで完結できればというのが理想です。これまで職員等が行っていた作業をICTで完結することで業務の効率化を図るものです。

― やはりスマートフォンが大きなキーデバイスになるということですね。

今、スマートフォンを使っている世代で、コンビニを使わないという人はほとんどいないでしょう。仕事帰りでも、コンビニを避けて通れるところは少ない。先ほど言いましたように、これまでだったら払いたいと思った時に“家に納入通知書を忘れてきた”とか、それで“また今度”と思ったら雨になってもう出かけたくないとなってしまうかもしれない。みなさん、肌身離さずスマホを持っていらっしゃいますから、すいりんによって、キャッシュレス決済で支払ったり、コンビニでの買い物ついでに払ってもらえたりできるようになったのは良かったと思っています。

― 課題として「料金収納にかかるコスト」も大きかったのですね。

私どもでは、未納に対する督促状や納入通知書の再発行など“二度目の郵便物”があります。こういったものだけで、年間1,200万円ぐらいのコストがかかっています。そういったところを削減していきたい。ペーパーレス、郵送レスというメリットは大きいと言えます。

― その“二度目の郵便物”、再送付になってしまうのは、どれぐらいの確率なのでしょうか?

92%ぐらいの方は1回で払っていただいています。ですから8%ぐらいでしょうか​。

― 8%とは言え、堺市は給水栓数35万ぐらいですよね!

はい。その8%の方に再送付するコストと手間がかかっています。もちろん、今回アプリを導入したからといって全く手がかからなくなることにはなりませんが、コストは下がると思います。

― 8%の方々も全員が悪意があって払わないわけではないですよね。

だと思います。この8%の方の多くが“払い忘れ”、つまりうっかり忘れではないでしょうか。ポストから郵便物がドサッと出てきてその中にまぎれてしまうこともあるでしょう。しかし、スマートフォンに送れば、すぐ近くのコンビニなどで払ったり、キャッシュレス決済したりしていただける。すいりんの導入によって8%という数字が下がり、それに伴い今までかかっていたコストが下がってくると期待します。まだ始まったところですが、数年かけて動向を見ていきます。必ず良くなると期待しています。

― 高齢者の方やスマートフォンを使えないような方にどう対処していかれるのでしょうか?

すべてのお客様がすぐにスマートフォンを活用し、すいりんを利用してくれるとは思っていません。しかし、スマーフォンの保有率も年々上昇しており、すいりんを利用できる環境は整ってくると考えています。一方で、これまでどおり、口座振替はもちろん、紙媒体の納入通知書も継続します。しかし、引き続き、すいりんを利用したキャッシュレス決済や情報発信などを充実し、魅力あるアプリとしていくことで利用者の増加に取り組んでいきます。

― 時間をかけて代替わりを進めていくけれど、それに乗りづらい人にもちゃんと選択肢は残しますという方針ですね。

むろん行政サービスですので、乗り遅れる人が出ないように考えていかなくてはなりません。そうかといって、その水準に合わせていくだけだと、いつまでたっても何も進みません。堺市上下水道局は、コストや使いやすさを考慮し、良いものであればICTを利用した新しい仕組みを取り入れていきたいと考えています。

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藪下様は、水道事業の課題に悩む自治体は堺市だけではないでしょうと話されました。「PAYSLE」は、少しでもそのような自治体の課題解決に貢献していきたいと願っております。

 

 

以上

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